第10回JCOG患者・市民セミナー(アドバンス編) 開催報告
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開催報告
2025年2月15日(土)、JCOGが実施している臨床試験に関連する内容を、臨床試験に携わる医師とともに学んでもらうことを主旨として第10回JCOG患者・市民セミナー(アドバンス編)を開催いたしました。
テーマ「JCOG試験結果の解説」
今年度発表されたJCOG試験の立案から結果までの流れを、各試験の研究事務局の先生に解説いただきました。今回は、上部尿路がん1試験と、食道がん2試験について解説いただきました。
プログラム(講義資料)
講義1:患者市民参画について | 上野 誠 先生 |
講義2:JCOG1403(上部尿路がん) | 伊藤 明宏 先生 |
講義3:JCOG1314(食道がん) | 對馬 隆浩 先生 |
講義4: JCOG1409(食道がん) | 竹内 裕也 先生 |
Q&A(ブレイクアウトルーム)
講義の後、申し込みいただいた方々により6個のブレイクアウトルームに分かれて講義の感想や意見交換を行いました。30分間という短い時間ではありましたが、参加者のみなさまの活発なディスカッションが各ルームで行われました。
- 様々なご意見が伺えて勉強になりました。
- 毎回思うことですが、患者さんの生の声は研究者としても非常に重要で、気付かされることも多いと思います。その意味でも貴重な機会だと感じています。
- 実際にその試験を担当された医師と直接話すことができて良かったです。研究者と患者市民の距離が縮められる良い機会ですね。
- いろんな角度からの感想や意見が聞けてよかったです。もう少し時間が欲しいと思いました。
- 先生たちが、専門外の話は「患者市民に近い感じで聞いている」と仰っていて、新鮮でした。
- 30分なので、人数(数人)は適切だとは思いましたが、30分で3つの試験について議論するのは無理なのでひとつかふたつに絞ってもよいのではと思いました。
- Q&Aセッションはとても刺激を受けています。今回ブレイクアウトルームでは患者は2人でした。私はJCOG患者市民セミナーへ参加の回数は多いですが、PPI実践は乏しくいつも背伸びしながら発言をしています。この緊張感がとても良い刺激になっています。
各講義でお寄せいただいたご感想の一部をご紹介いたします
講義1:患者市民参画について
- 本セミナーの意義がよくわかりました。患者、市民、医療者の順番に悩まれたところに先生の良心を感じました。
- 患者さんの立場、目線に配慮したいいお話だったと思います。
- 基本の確認ができてとても良い。聞くたびにいろいろ考えるきっかけになる。
- PPIによりどのような効果がでるのかがより具体的にわかると医療者も患者もこの取り組みに積極的になるかと思いました。
- 多数と少数の話は、自分が少数派になることが多いため、心に響きました。
- 臨床試験に対して、私たち患者も参加していいんだとむしろ参加することが大切なんだということがよくわかる講義だと思います。なかなか先生方に自分の意見を言う機会はないと思うので。
- PPIの基本的な学ぶことが整理され特に「なぜ臨床試験にPPIが必要か」を学ぶことができた。レイサマリ―についても学べた。
- PPIについて、もっと多くの患者、医療者、一般の人に興味を持ってもらいたいです。そのためにPPIやレイサマリーなどを広く発信して欲しいです。また今回のセミナーのような勉強できる機会が多くなることを期待します。
講義2:JCOG1403(上部尿路がん
- 「再発予防」という大変意義のある研究に取り組まれ、また一定の成果を上げることができた成功事例だと思います。今後保険収載を目指すという点も研究の意義を高めるもので患者には恩恵が大きいと思いました。
- 1回の抗がん剤使用で再発率に有意差があることがわかり、効果がありそうかも?で実施するのではなく、実施の根拠が明確になるので良いと思いました。患者数が少ないがん種なので研究も大変だと思いますが、今後抗がん剤の使用が必要な人とそうでない人がわかってくるといいなとも思います。
- 評価項目としてOSも確かに重要な指標ですが患者さんのQOLの高められたかに繋がる評価の試験も改めて大切だと思いました。
- 多くの臨床研究の倫理審査をしてきましたが、登録がなかなか伸びない悩みを多く聞くので、この試験は予定より早く登録が終わったというところであるとか、膀胱外再発が生じた患者さんの体に負担を掛けてまで、膀胱鏡検査を行わなくてもよい試験計画としたことなどが印象に残りました。
- 上部尿路術後は、再発が多いがと言われているなかで、ピラルビシン膀注療法が、再発予防に有効であることが、臨床試験によって評価されたことが結果を見てわかりました。とても結果として示していただき、期待されることと理解できました。
- 尿路内での再発の多さはびっくりしました。ピラルビシンの注入で再発が減るようになればすばらしい事です。
- endpointを3年とした理由についての患者さんからの鋭い意見が印象的でした。
講義3:JCOG1314(食道がん)
- 免疫チェックポイント阻害薬の治験との競合により登録数の集積が遅れたことなどの説明に、臨床試験の実際的な難しさを感じました。
- 立案からの経緯を伺い、過程で起きたご苦労も知ることができて研究の道の厳しさを知りました。途中で免疫チェックポイント阻害剤の登場で登録が停滞したことなど、製薬企業や資金面での内情も患者の知らない困難な事例もあることは重く受け止めました。
- 高額な治療が増えている最近の様子を考慮すると、使用できる抗がん剤の組み合わせで効果のある治療ができることは重要な視点だと思います。
- CTを使って説明してくださって、食道が背骨に近くて驚きました。抗がん剤同士の組み合わせによる試験であったと、質問したことで気づけてよかったです。学会発表から論文発表までも。いろいろ大変なんだと知りました。
- 優越性を示すことはできなかったとしても、可能性を追求する大切さと難しさを知ることが出来ました。
- 食道がんの切除不能、再発食道がんの一時治療における標準治療への臨床試験による新しい治療への試みですが、結果としては試験治療(bDCF療法)が、現時点の標準治療を上回ることができなかったが、このような試みを経て新しい治療に進めるのではないかと思いました。貴重な報告だと思いました。
- 臨床試験の途中で、新薬や企業治験が行われることで登録件数など大きく影響を受けることがあることを知りました。JCOGの試験はより患者に寄り添った研究が多いと理解しています。
講義4:JCOG1409(食道がん)
- 手術における治療開発の向上はめざましいものがあり、患者への負担軽減の取り組みは大変にありがたいと思いました。また施術後の管理も重要な要素であり、評価項目に上がっていることは心強く感じました。
- 低侵襲手術かどうかのランダム化とした場合、患者さんへの説明は難しいだろうなと思い、それでも相当数の登録を実現できているところにグループの力みたいなものを感じました。
- 手術の臨床試験は実施も難しいと思いますが、この方がよさそうと思っていることが実際にどうなのかを示すことは意義のある試験だと思いました。試験結果は限られた施設と術者のものですが、それを普及するための取り組みも必要になるのかもしれないと思います。
- 胸腔鏡やロボットなどの技術を評価する際に、患者のQOLをもっと取り入れるといいのではないかと思いました。
- 解説が丁寧で試験内容も理解しやすかったです。食道が3cmで内側が粘膜で、外側は筋肉で、重力で食べ物を落とす、と初めて知りました。写真で、がんはあんな風なんだ、とか、胸腔鏡は硬くて長いんだ、とわかりました。
- 治験とは異なる難しさがJCOG試験にはあると感じます。すでに現場で使われていて手ごたえもあるものを改めて検証の場に乗せなければならないからこそ、患者さんへの説明も難しいのだと思いました。すでにある程度評価されている治療なのに検証が必要な意味、理由への理解を患者さんにしっかりと伝えていくことが大事だと思いました。
- 新しい胸腔鏡下手術が、有効であると実証され臨床病期1,2,3期食道がんの標準治療となったことが患者立場から嬉しいこととおもいました。
- より侵襲の低い手術が開発されていくことは、患者にとって予後のQOL向上のためにもとても嬉しい事です。高度な技術が必要な手術だと思います。ぜひ全国でどこでもこの手術が受けられるように技術習得者の育成をお願いいたします。
- 今後のロボット手術に関する議論が印象的でした。
アドバンス編全体
- 研究事務補助をしておりますが、内容的にわかりやすく、ためになるセミナーでした。
- 日々進化しているがん研究の取り組みの困難さを知ることは患者の立場でも大事だと思いました。
- とても充実した一日でした。ありがとうございます。
- 多くのがん種の試験内容を知る機会になり、違った意味で良い機会になったと思います。自分のがん種との流れや動きの比較や情報入手の機会となった。
- 初級編参加後のアドバンス編でよかったです。
- 研究の案を起こすところからの全体の流れや、資金援助の有無による問題など、期間や財政援助、マンパワーなどのお話を聞けたのは勉強になりました。OSだけでなくQOLは大切、SDMってむつかしい、は、同感でした。
- 患者側の参加者をあまりお客様扱いせず議論に臨んでくださる先生が増えたように感じており、ありがたいことだと思います。いつか対面でディスカッションができるともっと深い話もできるかなと思いました。
- 今回は食道がんが多かったのですが、色々と知ることができてよかったです。
- いつも大変刺激を受けるセミナーです。患者の参加者が少ないのは気にかかります。最後にアドバンスは入門編を受講された方が参加条件になっていると説明されて理解できました。ということは入門編の参加者を増やすことが必要だと思いました。口コミも効果的なツールですが、レイサマリーなどを前面にしてより広い分かり易い発信も必要かと思いました。多くの人に経験して欲しいセミナーです。
- 参加される方のインテリジェンスが高いことはわかった。より一般の方にとって必要な医療は何かを考えるきっかけになりました。
JCOG患者参画委員会事務局 木村綾