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肺がん外科グループJCOG0802/WJOG4607Lの副次的解析論文がThe Lancet Respiratory Medicine (IF:76.2)に掲載されました
論文・学会発表- 肺がん外科グループJCOG0802/WJOG4607L"肺野末梢小型非小細胞肺癌に対する肺葉切除と縮小切除(区域切除)の第III相試験"の副次的解析論文がThe Lancet Respiratory Medicine (IF:76.2)に掲載されました
- Hattori A, Suzuki K, Takamochi K, Wakabayashi M, Sekino Y, Tsutani Y, Nakajima R, Aokage K, Saji H, Tsuboi M, Okada M, Asamura H, Nakamura K, Fukuda H, Watanabe SI, Japan Clinical Oncology G, West Japan Oncology G. Segmentectomy versus lobectomy in small-sized peripheral non-small-cell lung cancer with radiologically pure-solid appearance in Japan (JCOG0802/WJOG4607L): a post-hoc supplemental analysis of a multicentre, open-label, phase 3 trial. Lancet Respir Med. 2024 Jan 3.
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背景
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非盲検、多施設、ランダム化、対照、第3相JCOG0802/WJOG4607L試験において、薄切片CTでpure-solid tumorの外観を示した非小細胞肺がん(NSCLC)患者の全生存率では、肺葉切除術よりも区域切除術の方が良好であったが、区域切除術が全生存率の向上に関連する理由は不明であった。我々は、pure-solid tumorのNSCLCを有する試験参加者において、区域切除術と肺葉切除術後の生存、死因、再発パターンを比較することを目的とした。
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方法
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我々は、薄切片CTで画像的にpure-solid tumorの外観を有する小型NSCLC患者(20~85歳)を対象に、JCOG0802/WJOG4607Lランダム化比較非劣性試験の事後補足解析を行った(2cm以下、圧密化腫瘍比1~0)。主要目的は、画像的にpure-solid NSCLC患者に対する区域切除術と肺葉切除術に関連する全生存期間、無再発生存期間、死因、再発パターンを比較し、腫瘍学的に浸潤性の肺癌であっても、区域切除術の全生存期間が肺葉切除術より優れている理由を明らかにすることであった。JCOG0802/WJOG4607LはUMIN Clinical Trials Registry, UMIN000002317に登録され、完了している。
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結果
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2009年8月10日~2014年10月21日の間に、1106例の患者が肺葉切除術を受ける群と区域切除術を受ける群にランダムに割り付けられた。これらの参加者のうち、553人(50%)は画像的にpure-solid NSCLCであり、このpost-hoc補足解析の対象となった。これらの553人の参加者のうち、274人(50%)が肺葉切除術を受け、279人(50%)が区域切除術を受けた。患者の年齢中央値は67歳(IQR 61-73)、553人中347人(63%)が男性、206人(37%)が女性であり、人種および民族に関するデータは収集されなかった。データカットオフ(2020年6月13日)の時点で、追跡期間中央値7.3年(IQR 6.0-8.5)後、5年全生存率は肺葉切除術後よりも区域切除術後の方が有意に高かった(肺葉切除術群86.1%[95% CI 81.4-89.7]、死亡55例に対し、区域切除術群92.4%[88.6-95.0]、死亡38例);ハザード比(HR)0.64[95% CI 0.41-0.97];log-rank検定 p=0.033)、一方、5年無再発生存率は両群間で同程度であった(81.7%[95%CI 76.5-85.8]、34イベント vs 82.0%[76.9-86.0]、52イベント;HR 1.01[95% CI 0.72-1.42];p=0.94)。追跡期間中央値7.3年後の肺がんによる死亡は、肺葉切除術後274例中20例(7%)、区域切除術後279例中19例(7%)に認められ、その他の原因による死亡は肺葉切除術後35例(13%)に認められたのに対し、区域切除術後19例(7%)に認められた(肺がん死亡 vs その他の死因、p=0-19)。局所再発は区域切除術後の方が高かった(21例[8%]対45例[16%]、p=0.0021)。サブグループ解析では、70歳以上の患者のサブグループでは、肺葉切除術後よりも区域切除術後の方が5年全生存率が良好であった(肺葉切除術77-1%[95%信頼区間68.2-83.8] vs 区域切除術85.6%[77.5-90.9];p=0.013)し、男性患者においても良好であった(80.5%[73.7-85.7] vs 92.1%[87.0-95.2];p=0-0085)。対照的に、70歳未満のサブグループでは、肺葉切除術後の5年無再発生存率が区域切除術後よりも良好であった(肺葉切除術87.4%[95%信頼区間81.2-91.7] vs 区域切除術84.4%[77.9-89.1];p=0.049)し、女性患者においても良好であった(94.2%[87.6-97.4] vs 82-2%[73-2-88-4];p=0.047)。
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解釈
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このpost-hoc解析では、pure-solidNSCLC患者における区域切除後の全生存率は肺葉切除と比較して改善した。しかしながら、区域切除の生存成績は患者の年齢と性別に依存する。この探索的解析の結果を考慮すると、画像的にpure-solidなNSCLCにおける区域切除の臨床的に適切な適応を決定するためには、さらなる研究が必要である。
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