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JCOG肺がん外科グループ JCOG1710Aの最終解析論文がJournal of Geriatric Oncology (IF: 3.0)に掲載されました

論文・学会発表
  • JCOG肺がん外科グループ JCOG1710Aの最終解析論文がJournal of Geriatric Oncology (IF: 3.0)に掲載されました
  • Mizutani T, Takei H, Kunitoh H, Wakabayashi M, Sekino Y, Tsuboi M, Ikeda N, Asamura H, Okada M, Takahama M, Ohde Y, Okami J, Shiono S, Aokage K, Watanabe SI. Longitudinal assessment of functional independence of older adults after lung cancer surgery: Final results of the JCOG1710A prospective cohort study. Journal of geriatric oncology. 2025 May 30;16(6):102268.
  • はじめに

    • 我々は以前、75歳以上の非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して根治的外科切除後6か月時点の日常生活動作(ADL)を評価した前向き観察研究の結果を報告した。本報告では、この集団における24か月にわたる縦断的なADLの経過を示し、治療方針決定の支援や長期的な機能低下のリスク因子の特定に資する重要なデータを提供する。

       

  • 対象と方法

    • 本研究は日本国内で実施された前向き多施設共同観察コホート研究である。対象は、病期0〜III期NSCLCに対して根治的外科切除を受けた75歳以上の患者。ADLは、東京都健康長寿医療センター式高次生活機能評価指標(TMIG-IC)を用いて、術後6、12、24か月時点で評価された。ADLの低下は、スコアの3点以上の減少、またはデータ欠損と定義された。ADLの低下に関する多変量解析も実施した。

       

  • 結果

    • 追跡可能だった患者は876例で、追跡期間の中央値は24.2か月であった。術後6、12、24か月におけるADL低下の割合はそれぞれ11.0%、10.3%、12.6%であった。多変量解析の結果、術後6か月時点のADL低下には、パフォーマンスステータス不良、G8スコア低値、くさび切除ではなく区域切除の施行、手術時間3時間未満などが関連していた。一方、24か月時点ではG8スコア低値のみがTMIG-ICスコア低下と有意に関連していた。術後6か月時点では、区域切除はくさび切除と比較してADL低下と有意に関連しており、オッズ比(OR)は4.96(95%信頼区間[CI]: 1.88-13.07)であった。しかし、24か月時点では両者に有意差は認められず(OR: 0.92、95%CI: 0.40-2.10)、差は消失していた。

       

  • 考察

    • 75歳以上の肺がん手術患者の約10%が術後6か月でADLの低下を経験したが、その後の割合は安定しており、さらなる機能低下は示唆されなかった。くさび切除では短期的なADLの保持に有利であったが、その利点は時間の経過とともに減弱した。本研究の知見は、治療戦略に関する患者の意思決定にも有用と考えられる。

       

  • キーワード:ADL、肺葉切除、肺がん、高齢者、区域切除、外科手術