放射線治療グループ Radiation Therapy Study Group:RTSG
放射線治療グループ Radiation Therapy Study Group:RTSG
- グループ代表者:溝脇尚志(京都大学医学部附属病院)
- グループ事務局:中村直樹(聖マリアンナ医科大学)
- 主任研究者:秋元哲夫(東京慈恵会医科大学)
古平毅(愛知県がんセンター)
村上祐司(広島大学病院)
中村匡希(国立がん研究センター東病院) - グループ代表委員:伊藤慶( がん・感染症センター都立駒込病院 )
木藤哲史(がん・感染症センター都立駒込病院)
木村智樹(高知大学医学部)
坂中克行(京都大学医学部附属病院 )
全田貞幹(国立がん研究センター東病院)
中村光宏(京都大学医学部附属病院 )
西淵いくの(広島大学病院)
二瓶圭二(大阪医科薬科大学)
平田秀成(国立がん研究センター東病院)
松尾幸憲(近畿大学病院)
村上直也(順天堂大学医学部附属順天堂医院)
安田耕一(北海道大学病院) - 設立:2003年
- 放射線治療グループの各研究グループ連絡担当者について
※このPDFファイルはメンバーのみ閲覧できます
※グループ代表委員とは、グループで行われる臨床試験の計画、実施の際に中心的な役割を担うメンバーです。
※主任研究者に関する詳しい情報は、共同研究班一覧をご覧ください。
はじめに
放射線治療は手術や抗がん剤とともに、がん治療における三本柱の一つとして使われています。身体への負担が少なく臓器の形や機能の温存が可能なこと、また社会の高齢化とともに生活の質を大切にする患者さんが増えたこともあり、放射線治療を必要とする患者さんの数は年々増えています。
我が国では欧米に比べがん治療で放射線治療が行われる割合が低いといわれており、2007年に決められた国の「がん対策推進基本計画」では、放射線治療を推進・普及することが重要課題の一つとして取り上げられました。2012年、2018年と新たに策定された「がん対策推進基本計画」においても、質の高い安全な放射線治療の推進、強度変調放射線治療や粒子線治療などの高度な放射線治療の実施体制の確立がうたわれています。私たちも、より治療効果が高く有害事象の少ない革新的な放射線治療の開発・推進・普及を図ろうと日々努力を重ねています。
研究の歴史
JCOG放射線治療グループは2003年、厚生労働省の厚生労働科学研究費補助金「効果的医療技術の確立推進臨床研究事業」による「先進的高精度三次元放射線治療による予後改善に関する研究」班(主任研究者:平岡眞寛)を母体として設立され、平岡眞寛が初代グループ代表に就任しました。2004年には「T1N0M0 非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療第II相試験(JCOG0403)」として、先端放射線治療である定位放射線治療の効果と安全性を評価する臨床試験を開始しました。また、安全で質の高い放射線治療の実施に欠かせない品質管理・品質保証システムの確立のため、アメリカやヨーロッパの公的研究グループと連携し、品質管理・品質保証システムのグローバルスタンダード確立に向けた共同プロジェクトに参加しています。
2005年には厚生労働省がん研究助成金「放射線治療期間の短縮に関する多施設共同臨床試験の確立に関する研究」班(主任研究者:加賀美芳和)が、2008年からは厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業による「高精度治療技術による低リスク高線量放射線治療に関する臨床研究」班(研究代表者:白土博樹)および厚生労働省がん研究助成金指定研究「放射線治療を含む標準治療確立のための多施設共同研究」班(主任研究者:平岡眞寛)が加わり、複数の研究班からなる多施設共同臨床試験グループとなりました。
2011年からは、厚生労働科学研究費補助金がん臨床研究事業による「頭頸部腫瘍に対する強度変調放射線治療の確立と標準化のための臨床研究」班(研究代表者:西村恭昌)および国立がん研究センターがん研究開発費「放射線治療を含む標準治療確立のための多施設共同研究」班(主任研究者:伊藤芳紀)により、2014年からは、国立がん研究センターがん研究開発費「成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究」班(主任研究者:飛内賢正)およびAMED研究費:革新的がん医療実用化研究事業「頭頸部腫瘍に対する強度変調放射線治療の確立と標準化のための臨床研究」班(研究開発代表者:西村恭昌)により研究を実施しました。
2016年から、西村恭昌がグループ代表となり、また新たな研究費としてAMED研究費:革新的がん医療実用化研究事業「切除可能肝細胞癌に対する陽子線治療と外科的切除の非ランダム化比較同時対照試験」班(研究開発代表者:秋元哲夫)および、国立がん研究センターがん研究開発費「陽子線治療を用いた多施設臨床試験実施体制確立に関する研究」班(主任研究者:秋元哲夫)が加わりました。2017年からは、国立がん研究センター研究開発費「成人固形がんに対する標準治療確立のための基盤研究」班(主任研究者:大江裕一郎)およびAMED研究費:革新的がん医療実用化研究事業「早期非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療線量増加ランダム化比較試験」班(研究開発代表者:永田靖、2023年から村上祐司に交代)、さらに2019年にはAMED研究費:革新的がん医療実用化研究事業「子宮頸癌根治術後再発高リスク患者に対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた低毒性補助療法の確立に向けての研究」班(研究開発代表者:戸板孝文)が加わり、現在研究を実施しています。
これまで実施したあるいは計画中の臨床試験
上記のJCOG0403では、特に高齢のT1N0M0 非小細胞肺癌患者さんに対して、手術が可能な場合でも定位放射線治療が有用な治療選択肢となることが分かりました。その後「T1-2N0M0 声門癌に対する放射線治療の加速照射法と標準分割照射法のランダム化比較試験(JCOG0701)」として、早期の喉頭癌に対して治療期間を短くした放射線治療の効果と安全性を評価する臨床試験を実施しました。その他、「手術不能または高齢者手術拒否T2N0M0非小細胞肺癌に対する体幹部定位放射線治療第I相試験(JCOG0702)」、「乳房温存療法の術後照射における短期全乳房照射法の安全性に関する研究(JCOG0906)」などを行い、報告してきました。さらには先進的放射線治療である強度変調放射線治療の有効性と安全性を評価する「上咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同第II相臨床試験(JCOG1015)」を実施し、良好な生存率と唾液腺障害の低減を証明しました。さらに、「T1-2N0-1M0中咽頭癌に対する強度変調放射線治療(IMRT)の多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1208)」、婦人科腫瘍グループとの共同試験である「子宮頸癌術後再発高リスクに対する強度変調放射線治療(IMRT)を用いた術後同時化学放射線療法の多施設共同非ランダム化検証的試験(JCOG1402)」、脳腫瘍グループとの共同試験である「高齢者初発膠芽腫に対するテモゾロミド併用寡分割放射線治療に関するランダム化比較第 III 相試験(JCOG1910)」も登録を終え、現在経過観察中です。現在登録中の試験は、肺がん内科グループとの共同試験である「臨床病期IA期非小細胞肺癌もしくは臨床的に原発性肺癌と診断された3cm以下の孤立性肺腫瘍(手術不能例・手術拒否例)に対する体幹部定位放射線治療のランダム化比較試験(JCOG1408)」、肝胆膵グループとの共同で先進医療Bとして実施している「切除可能肝細胞癌に対する陽子線治療と外科的切除の非ランダム化同時対照試験(JCOG1315C)」、食道がんグループとの共同試験である「Clinical-T1bN0M0 食道癌に対する総線量低減と予防照射の意義を検証するランダム化比較試験(JCOG1904)」、頭頸部がんグループとの共同試験である「頭頸部癌化学放射線療法における予防領域照射の線量低減に関するランダム化比較試験(JCOG1912)」、泌尿器科腫瘍グループの共同試験である「High volume転移を認める内分泌療法感受性前立腺癌患者に対する抗アンドロゲン療法への局所放射線治療併用の意義を検証するランダム化Ⅲ相試験(JCOG2011)」、肺がん外科グループ、肺がん内科グループとの共同試験である「非小細胞肺癌術後オリゴ再発に対する全身治療後の維持療法と局所治療を比較するランダム化比較第III相試験(JCOG2108)」、乳がんグループとの共同試験である「オリゴ転移を有する進行乳癌に対する根治的局所療法追加の意義を検証するランダム化比較試験(JCOG2110)」、の7試験です。2024年には、照射歴を有する有痛性脊椎転移に対する通常照射と体幹部定位放射線治療のランダム化比較第III相試験(JCOG2211)」を開始予定です。頭頸部がんグループ、脳腫瘍グループ、肺がん内科グループ、肺がん外科グループ、大腸がんグループをはじめとするJCOGの各研究グループの臨床試験におきまして、放射線治療プロトコールの立案やIMRTの品質管理で協力しています。
今後の展望
Information Technology(IT)技術が進歩し、放射線治療もこれまでの二次元的な手法から三次元/四次元放射線治療(3D/4D-CRT)へと、また定位放射線治療(SRT)、強度変調放射線治療(IMRT)、画像誘導放射線治療(IGRT)、粒子線治療などの先進的な治療技術へと急速に高度化が進んでいます。私たちはこれらの先進的技術の有効性を科学的に評価しつつ、今後はさらにJCOGの各研究グループと共同で先進的放射線治療に手術や抗がん剤を組み合わせた集学的治療の評価も行い、日常診療において高精度放射線治療が多くの患者さんに標準治療として提供されることを願っています。
※グループ活動の紹介文は、2024年4月に更新したものです。
実績