泌尿器科腫瘍グループ Urologic Oncology Study Group:UOSG

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泌尿器科腫瘍グループ Urologic Oncology Study Group:UOSG

  • グループ代表者:北村寛(富山大学附属病院)

  • グループ事務局:河原貴史(筑波大学医学医療系)
    松井喜之(国立がん研究センター中央病院)
    西山直隆(富山大学附属病院)
  • 主任研究者:賀本敏行(宮崎大学医学部附属病院)
    松元崇(九州大学病院)

  • グループ代表委員:安部崇重(北海道大学病院)
    大澤崇宏(北海道大学病院)
    木村高弘(東京慈恵医科大学)
    小島崇宏(愛知県がんセンター)
    寺田直樹(福井大学医学部)
    成田伸太郎(秋田大学医学部)
    松元崇(九州大学病院)

  • 設立:2001年

     

※グループ代表委員とは、グループで行われる臨床試験の計画、実施の際に中心的な役割を担うメンバーです。
※主任研究者に関する詳しい情報は、共同研究班一覧をご覧ください。

JCOG泌尿器科腫瘍グループは、泌尿器科領域の悪性腫瘍の標準治療を確立することを目的とする医療機関の診療科もしくは診療グループの集まりです。
標準治療とは、それぞれの疾患において、患者さんの体力や合併症に問題がない限り、真っ先に患者さんにおすすめすべき治療です。

          

泌尿器科悪性腫瘍とは

本グループが研究対象とする泌尿器科悪性腫瘍は、泌尿器(腎・腎盂・尿管・膀胱・尿道)、及び男性生殖器(前立腺・陰茎・精巣)と、解剖学的に泌尿器・男性生殖器に近い臓器(副腎・後腹膜腫瘍)から発生する腫瘍を対象とします。
頭から足の方へ順に列記すると、副腎癌・腎癌・腎盂尿管癌・後腹膜腫瘍・膀胱癌・前立腺癌・陰茎癌・精巣癌となり多岐にわたります。

      

泌尿器科悪性腫瘍でなぜ臨床研究体制が必要か

泌尿器科悪性腫瘍は同一臓器であっても腫瘍のステージにより病態が大きく異なります。さらに組織型の違いによっても、悪性度や治療への反応も多様であり、幅広い病態を対象としています。
このような背景から、個別の臓器・ステージ・組織型ごとに臨床試験を計画するには、1施設あたりの症例数が限られることが多く、1施設で十分な症例を集積することは困難となる場合が少なくありません。
さらに、日本は世界有数の高齢化社会を迎えており、泌尿器科悪性腫瘍をもつ患者も高齢者の割合が年々増加しています。高齢者では、併存疾患や加齢に伴う身体機能の個人差が大きく、非高齢者で行われる標準治療が行えない症例も少なくありません。こうした多様な患者背景を考慮し、実臨床に即したエビデンスを創出するには、幅広い症例を集積できる質の高い研究基盤を有する多施設共同研究体制が極めて重要となります。

JCOG泌尿器科腫瘍グループの試験

JCOG泌尿器科腫瘍グループは、2002年より活動を始めました。参加施設は、現在44施設です(参加施設は、グループ別参加施設一覧をご覧ください)。

発生頻度が低く、かつ、多種多様を極める泌尿器科悪性腫瘍の場合、全国におよぶ多施設の合意のもとに、一致協力して臨床研究を実施しない限り、患者さんに貢献する成果を出すことができず、世界に向けた情報発信もできません。JCOG泌尿科腫瘍グループは、、常に参加施設の新陳代謝を図りながら、質の高い研究活動を目指しています。

これまで、JCOG試験としまして4つの臨床試験を行ってきました。

  1. JCOG0209 

    筋層浸潤性膀胱がん(T2-4aN0M0)患者さんを対象とした試験で術前MVAC化学療法(メソトレキセート、ビンブラスチン、ドキソルビシン、シスプラチン)の有用性を検証した日本初の前向き第III相ランダム化比較試験です。本試験の結果、術前にMVAC療法を行うことで、病理学的完全奏効割合(pCR)や病理学的ダウンステージ割合が有意に向上し、膀胱全摘除術との併用による治療戦略の可能性が強く示唆されました。また、全生存期間(OS)にも改善傾向が認められ、術前化学療法の導入が予後改善に寄与する可能性が示されました(Annals of Oncology誌掲載)。これにより、本邦においても術前MVAC化学療法は筋層浸潤性膀胱がんにおける標準治療の一つとしての位置付けが確立される礎となった重要な研究といえます。

  2. JCOG0401 

    局所限局性前立腺癌の患者さんを対象とした試験で根治的前立腺全摘除術後にPSA(前立腺特異抗原)のみ上昇してきて、まだ画像では明らかな異常のない場合(PSA再発)に、ホルモン療法・放射線治療のいずれを先行実施すべきかという疑問に答えるためのランダム化比較試験です。この試験では、放射線治療を先行して実施した患者さんのうち、1/3の方がホルモン療法を必要とせずに再発を認めない結果であり、PSA再発に対して最初に放射線治療を選択することの有用性が示されました(European Urology誌掲載)。また、本研究の副次解析では、救済放射線療法の有効性を予測するノモグラムを確立しInternational Journal of Clinical Oncology誌にその内容が報告され、さらに附随研究である「早期前立腺がんにおける根治術後PSA再発における病理学的および分子生物学 的予測因子探索」に関する研究(JCOG0401A1)についても現在論文化が進められています。

  3. JCOG1019 

    ステージ1の筋層非浸潤性膀胱がん(T1N0M0)患者さんを対象とした試験で初回の経尿道的膀胱腫瘍切除術にて上皮下結合組織への浸潤を認めるT1膀胱がんと診断され、再度の経尿道的切除術(セカンドTUR)を行い、病理診断にて残存腫瘍が認められなかった患者さんに対して、標準治療とされるBCGの膀胱内注入療法が回避できるか否かを検証した第III相非劣性ランダム化試験です。結果は、5年無再発生存割合(Tis/Ta再発を除く)は経過観察群86.5%、BCG群81.8%で非劣性(HR 0.69、90%CI 0.44-1.08;P_non inferiority=0.00102)が証明され、5年全生存割合はWW群92.0%、BCG群91.7%、無転移生存割合も同等でした。BCG群では有害事象が多く、経過観察群の方が安全性が高いことも示されました。これらの結果は、「セカンドTUR後に腫瘍が消失していれば、BCGなしでも高リスクT1膀胱がんの治療成績を維持できる」有力なエビデンスとなり、治療選択の柔軟性が大きく向上する可能性を示しています。本試験の結果は、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress)2024にて発表されました。

  4. JCOG1403 

    局所限局性上部尿路(腎盂・尿管)尿路上皮がん(Stage 0a-III)患者さんを対象として、腎尿管全摘除術の直後に膀胱内に抗がん薬であるピラルビシン(THP)を単回注入することの有効性を検証した第III相ランダム化試験です。310名を登録し、術後直後にTHPを膀胱内注入した群では、観察群に比べて1年・2年とも再発割合が約17%に低下し、膀胱再発リスクが半減する優れた効果が確認されました。また、重篤な副作用はなく、安全性も良好で、術後管理において有力な戦略となる結果でした。本試験の結果は、欧州泌尿器科学会(EAU Congress) 2024にて発表されました。現在附随研究としてJCOG1403A1「上部尿路がんにおける予後予測マーカーの開発」が進んでいます。



現在進行中のJCOG試験

  1. JCOG1905 

    「進行性腎細胞がんに対するPD-1経路阻害薬の継続と休止に関するランダム化比較第III相試験」
    転移性・進行性腎がん患者さんを対象とした試験で免疫チェックポイント阻害薬における至適投与期間を検証する第III相試験であり、治療の有効性を維持しつつ、不必要な投与を避けることで副作用や医療コストの軽減を目指す、持続 vs 中断再開療法の最適化を探る重要な試験と考えられます。免疫チェックポイント阻害薬による薬物療法を開始し、約半年間病勢が安定していた患者さんを治療継続と治療中止に無作為に割付け、全生存期間や無増悪生存期間、有害事象などを比較検討しています。

  2. JCOG2011 

    「High volume転移を認める内分泌療法感受性前立腺がん患者に対する抗アンドロゲン療法への局所放射線治療併用の意義を検証するランダム化第III相試験」
    転移量の多い内分泌療法感受性前立腺がん患者さんを対象とし、内分泌療法に加えて前立腺への局所放射線治療を併用することによる生存期間の改善、化学療法不要期間延長などを検証する第III相試験となります。転移例への局所制御効果の有用性を明らかにし、治療戦略のパラダイム転換に寄与する臨床的意義を持つ試験として、放射線治療グループとのインターグループスタディ(共同研究)として現在進行中です。

今後の展望

JCOG泌尿器腫瘍グループは、比較的新しいながらも着実に発展を遂げている研究グループであり、全国規模で均質な症例登録を通じて、多様な患者背景を反映した信頼性の高いエビデンスの創出に取り組んでいます。JCOGのような多施設共同研究グループは、質の高い臨床研究を推進するうえで極めて重要な役割を担っていると自負しており、実際にこれまでの臨床試験から得られた成果も徐々に明らかになりつつあります。

現在は、各疾患ごとに設置したスモールワーキンググループに全国の若手医師を積極的に登用し、組織力を活かした新規研究立案に向けて、日々活発な議論を重ねています。 今後は、日本全国からより多くの患者さんに研究へご参加いただけるようなシステムの整備にも取り組み、多くの患者さんのニーズにお応えできるような臨床研究を行っていきたいと考えております。

     

※グループ活動の紹介文は、2025年7月に更新したものです

       
     

実績

        

その他の研究グループ