大腸がんグループ Colorectal Cancer Study Group:CCSG

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大腸がんグループ Colorectal Cancer Study Group:CCSG

  • グループ代表者:
    金光幸秀(国立がん研究センター中央病院)

  • グループ事務局:
    塚本俊輔(国立がん研究センター中央病院)
    髙島淳生(国立がん研究センター中央病院)


  • 主任研究者:
    金光幸秀(国立がん研究センター中央病院)
    髙島淳生(国立がん研究センター中央病院)
    伊藤雅昭(国立がん研究センター東病院)

  • グループ代表委員:
    赤木智徳(大分大学医学部)
    伊藤雅昭(国立がん研究センター東病院)
    伊藤芳紀(昭和大学病院)
    猪股雅史(大分大学医学部)
    大植雅之(大阪国際がんセンター)
    設楽紘平(国立がん研究センター東病院)
    瀧井康公(新潟県立がんセンター新潟病院)
    藤田伸(栃木県立がんセンター)
    山崎健太郎(静岡県立静岡がんセンター)

  • 設立:2001年

           

※グループ代表委員とは、グループで行われる臨床試験の計画、実施の際に中心的な役割を担うメンバーです。
※主任研究者に関する詳しい情報は共同研究班一覧をご覧ください。

                

概要

JCOG大腸がんグループは、2001年に大腸がん外科グループとしてJCOG内に創設されました。初代グループ代表者 森谷冝皓先生と第2代島田安博先生の強力なリーダーシップと、大腸がん治療における国内の遅れを取り戻したいという大腸がん治療医の熱意により、その後15の第III相臨床試験(JCOG0205、JCOG0212、JCOG0404、JCOG0603、JCOG0903、JCOG0910、JCOG1006、JCOG1007、JCOG1018、JCOG1107、JCOG1310、JCOG1502C、JCOG1503C、JCOG1801、JCOG1805)を計画、実施してきました。現在60施設が参加し、多施設共同研究を展開しています。また、欧州のEORTC(European Organization for Research and Treatment of Cancer)との共同研究も実施されています。

          

研究のあゆみ

大腸がんグループでは、国内医療環境の特徴である、優れた外科手術と病理診断を基礎として治療成績を向上させるための臨床試験を行ってきました。2011年からその成果が実を結び始め、2014年にはStage IIIの治癒切除大腸癌に対する術後補助化学療法としての5-FU+l-LV静注併用療法に対するUFT+LV錠経口併用療法の非劣性を証明したJCOG0205の最終解析結果が論文化されました(Eur J Cancer)。
その後も第III相試験の結果が続々と明らかとなりました。JCOG0404は根治可能な臨床的Stage II/III結腸癌を対象として、開腹手術に対する腹腔鏡手術の非劣性を検証した試験で、統計学的には非劣性は証明されなかったものの、良好な生存曲線の結果から、臨床的に腹腔鏡下手術が劣っているかもしれないと懸念される対象に注意すれば、治療のオプションとして許容されるという結果でありました(Lancet Gastrohep 2017)。
JCOG0910では、Stage IIIの治癒切除大腸癌に対する術後補助化学療法はCapecitabine療法が標準治療であり、S-1療法は推奨されないことが明らかになりました(Lancet Gastrohep 2017)。下部進行直腸癌に対する側方郭清(LLND)の意義を検証したJCOG0212では、直腸間膜切除(TME)+LLNDの非劣性は証明されず、TME群で生存期間が劣る傾向にあったこと、およびTME+LLND群では局所再発割合が有意に低く、特に骨盤側方でその傾向が顕著であったことから、日本人の下部進行直腸癌ではTME+LLNDが標準治療であることが支持されました(Ann Surg 2017)。JCOG0603(肝転移切除後の補助化学療法の意義に関する試験)では、肝切除後の術後補助化学療法(FOLFOX)による全生存率の改善は認められず、主解析結果はASCO2020のoral presentationで発表されました。JCOG1007(原発巣切除の意義に関する試験)についても試験が終了し、現在は主解析結果を投稿中です。このように、内外との手術方法および病理診断法の違いを十分に勘案し、欧米で有効性が証明されている治療法も、わが国独自の尺度で判断するというコンセプトが、続々と「ランダム化比較試験(RCT)からのエビデンス」として結実しています。また、JCOG1410A(下部直腸癌に対する術前診断向上のための観察研究)は患者登録が終了し、現在は画像判定を行っており、側方転移の診断基準の創出につながることが期待されます。

現在はJCOG1018(高齢切除不能進行癌に対する全身化学療法に関する試験)、JCOG1107(原発巣切除における腹腔鏡下手術の有用性に関する試験)、JCOG1502C(小腸腺癌に対する術後補助化学療法に関する試験)、JCOG1503C(大腸癌に対するアスピリンの効果に関する試験)、JCOG1805(Stage II大腸癌に対する補助化学療法に関する試験)、JCOG1612(直腸SM癌に対する化学放射線療法に関する試験)、JCOG1801(直腸癌局所再発に対する術前化学放射線療法に関する試験)と多くの試験が進行中です。2017年から大腸がんグループ初の国際共同試験であるDREAM試験(JCOG1609INT:肝転移病変に対するMRI診断能に関する試験)が、JCOGとEORTCとの共同研究として開始されており、臨床試験の国際化も進んでいます。
そして、これまで登録された4,000人を超える患者さんの貴重な大規模臨床試験の臨床データと、手術標本や末梢血などの臨床検体の遺伝子解析データとを比較検討するトランスレーショナル研究(JCOG1506A1)も、バイオバンクジャパン(BBJ)との共同研究として開始し、治療成績の向上と治療の個別化に挑戦しています。

         

今後の展望

新規試験として、直腸がんに対するTotal Neoadjuvant Therapyに関する試験、高度進行結腸癌に対するNeoadjuvant chemothepyに関する試験、再発低リスク大腸がん患者に対するフォローアップに関する試験の検討が進んでいます。そして、新薬開発において、わが国はイリノテカン、オキサリプラチンなどでは世界をリードしてきましたが、分子標的薬の時代には大きな遅れが生じました。国際共同治験により、そのギャップが埋まりつつあるとはいえ、画期的な新薬によって飛躍的に治療成績が向上する時代が今後も持続するとは限りません。このような時期にこそ、臨床腫瘍医は何を考え、どう行動するかが大きな試練となります。海外では膨大な臨床試験からの情報と、検体検査からの情報を用いた新しい試みが次々と継続的に行われています。当グループでも、再び世界にインパクトを与える臨床試験を実施するために、薬物療法委員会を立ち上げて切除不能大腸がんを対象とした新規試験を計画しています。
森谷冝皓先生の初代グループ代表者としての最終講義にありましたように、「私たちは未だ答えを持たない」という現実をしっかり認識して、現状に満足することなく研究を推進したいと考えます。
これからの10年は、JCOGだけでなく、わが国の臨床腫瘍医の底力が、まさに試される時期と思います。大腸がん治療に関わる全ての専門医が、知恵と経験を凝縮して大腸がん患者さんの治療成績向上に総力戦で臨まなければいけないと思います。参加者全員で現在のClinical Questionを検討し、RCTによって回答を得るというグループの研究方針を再確認し、これからも臨床試験を積極的に推進していきます。

          

※グループ活動の紹介文は、2020年10月に更新したものです。

         
    

実績

        

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